アニメ『あさがおと加瀬さん。』レビュー

アニメ『あさがおと加瀬さん。』レビュー

★★★★★★★☆☆☆ 7/10

6月9日公開の『あさがおと加瀬さん。』を映画館で見てきました。1時間と時間も短いので映画ではなくOVAの劇場公開というスタンスのようですね。公開期間も短いようなので気になる方はお早めに。

女の子同士の恋愛を描いていますが、むしろそれ故に純粋な恋愛ものになっていて、百合好きでもそうでなくてもキュンキュンできる作品だと思います。

作品について

原作は高嶋ひろみによる漫画「加瀬さん。」シリーズ。今は休刊してしまいましたが百合アンソロジーコミックの「ひらり、」で始まったシリーズで、内容は推して知るべし。

監督は「selector WIXOSS」シリーズなどで知られる佐藤卓哉。企画にもクレジットされてましたね。何気にメインキャラ2人の中の人も「selector」つながりです。理不尽なカードバトルは出てきませんが、揺れ動く感情表現の演出など監督の持ち味が生きている印象です。

山田と加瀬さん

ストーリーは高校3年生の山田と加瀬さんの2人が付き合い始めたところから始まります。話が早くて助かるわ^〜。

何と言っても女の子が可愛いですね。崩した時の絵柄を含めてキャラデザが素晴らしい。

緑化委員の山田は内気な性格で、人気者の加瀬さんを憧れ混じりの眼差しで見ており、付き合いたての浮かれポンチな感じがその動きでも表現されており可愛いです。

一方の加瀬さんは陸上部のエースでクール系。地道に緑化委員の仕事に励む山田を見初めていて、こちらは憧れというより完全に恋愛対象として山田を見ていますね。というか初めて行った山田の部屋でベッドをクンカクンカしたり行動原理が完全におっさんだよね…

色恋には疎くて純朴な山田と、おっさんの眼光で山田を狙う加瀬さんの対比が面白いです。

加瀬さんは自分の欲望に素直なだけでなく、自分の考えをちゃんと相手に伝える男前なところがあってもう天然タラシですね。そんな加瀬さんに影響されたのか、引っ込み思案な山田も自分の本当の気持ちに気づいていくという流れも尊い。

好きな人と一緒にいられる幸福感や、ちょっとしたすれ違いで増殖していく不安感など、恋愛ものとしてはド直球な内容に臆面もなくフォーカスしているのは逆に新鮮に感じます。これが成立しているのも女の子同士という設定ゆえかもしれません。

アニメの自由と不自由

恋している相手がキラキラと輝いて見えるという瞬間が、文字通り光あふれる演出で表現されてるシーンは印象的です。こうした光と陰を使った演出が効果的に使われていて、アニメならではですね。水彩画調の背景美術も作品に合っていて爽やか。

女の子がキャッキャウフフするアニメは多いものの、この作品のようにお付き合いまでちゃんと描いたアニメは意外と少なく、その点でも歓迎したいです。

百合に限った話ではないですが、アニメだと制作費的に最大公約数的なところを狙わざるを得ないせいか、漫画の多様性に比べて内容の幅が狭く均質化している印象があるんですよね。

本作は基本ライトな内容ですが、ちょっとだけ踏み込んだ描写もあり、こういう作品をアニメ化してくれたスタッフには感謝です。OVAという形でも、もっとこういう作品が増えると嬉しいですね。

まとめ

明確な百合を意識した作品ですが、実際に付き合ってますというアニメは意外に少なく、恋愛のウキウキ感、青春のキラキラ感がストレートに表現されていて眩しい。

約1時間という時間もあって取り立てて大きなことが起こるわけでもなく、言ってしまえばフツーの恋愛ものですが、逆に言うと女の子同士の恋愛が非常にナチュラルに描かれているのが大きな魅力と言えると思います。

『リズと青い鳥』も良かったし、最近百合づいていてたいへんよいです。

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