映画『BLAME!』レビュー – 弐瓶勉×ポリゴンピクチュアズによる待望の映画化

映画『BLAME!』レビュー – 弐瓶勉×ポリゴンピクチュアズによる待望の映画化

★★★★★★★★☆☆ 8/10

弐瓶勉の原作漫画をポリゴン・ピクチュアズがフルCGで映画化。原作者が監修に加わり、独特な世界観と映像美が魅力のハードSFアニメに仕上がっています。

ハードSFながら普遍的なストーリー

人の造った建築物が人間の管理を離れて無限に自己増殖していき、人が不法居住者として「駆除」されるようになったディストピアを描きます。

都市に最後に残った自然は人間だけだという言葉もありますが、発達しすぎた技術によって遂に人間自身も排除されるのではないかという潜在的な不安を具現化した世界になっています。

原作の連載開始は1997年なので20年越しの映画化ですが、古さを感じさせないどころか近年のAIやロボティクスの急激な発展を見るとむしろ現実味を増しており、先見の明を感じますね。さすがツトム。

設定はハードSFですが、基本的なプロットは外敵の脅威に怯え食料が枯渇していた村に、不思議な力を持った旅人が現れ安息の地に導く、というどこかの民話のような話で、アフリカから世界中の大陸に新天地を求めて散らばっていった人類にとっては神話的普遍性を持ったストーリーと言えると思います。

ゴリゴリのSFにこうしたストーリーを合わせることで、多少設定がわからなくても観る人に共感を感じさせる作りになっており、この辺り上手いですね。

途中に火を囲んで皆で休息をとるシーンがあるのですが、狩猟生活をしていた頃の人類のようで、どれだけテクノロジーが発達しても人間自体は何も変わらないということを暗示します。

最近シンギュラリティなんかが流行っていますが、個人的にはこういう世界観の方がリアリティを感じますね。

作品の世界観を体現した映像美

弐瓶勉とポリゴン・ピクチュアズのコンビは『シドニアの騎士』でもお馴染みで、フルCGアニメですが映像的にはほとんど違和感なく見られるようになりましたね。

特に本作は映画という事でグラフィック的にはかなり力が入っていると思います。

「重力子放射線射出装置」による爆発シーンやクライマックスのアクションシーンなども圧巻の迫力。キモいデザインのロボットがキモい動きで大量に迫ってくるシーンなんかも最高にキモくて素晴らしいです。

ただ煙の描写は物理エンジンでの描写のようで、普通というか何か物足りなく感じますね。煙や爆発は昔からアニメーターの見せ場の一つで、様々な技法が凝らされてきたシーンですが、CGだと物理的には正しいかもしれませんが迫力はイマイチで、課題の一つでしょうか。

CG以外では、ロングショットで弐瓶勉独特の巨大建築物を画面全体に描くパースが多用され、作品の世界観を上手く演出しており非常に印象的かつ美しいです。こういう映像を見ると映画館で見たくなってしまいますね。

演出や展開に一部ありきたりな所があるものの、原作者が監修という事でかなりその意向が反映されているようで、才能を持ったクリエイターのオリジナリティを細部にわたって堪能できるのが本作の最大の魅力だと思います。

劇場公開と同時に世界配信

本作では劇場公開と同時にNetflixで全世界独占配信が開始されるという珍しい試みもなされました。

最近ではアメリカで劇場公開された映画『アナイアレイション』が日本ではNetflixで配信され、これは『BLAME!』とは逆パターンですね。

映画を全世界で配給するのは興行的にハードルが高く、評価が良くても日本では劇場公開されずにパッケージになるのを待たないといけなかったりしましたが、Netflixのようなグローバルな配信サービスのおかげで公開とほぼ同時に世界中で見られる作品が増えてきました。

映画館で観る良さも勿論ありますが、視聴手段が多様化してより多くの作品が楽しめるようになったのは素直に歓迎したいと思います。

Netflix で見る。