★★★★★☆☆☆☆☆ 5/10
「アニゴジ」3部作の完結編となる本作。
第1章はバカでかいゴジラ、第2章はメカゴジラシティという意表を突いた展開でそれなりに興味を引かれるところがありましたが、完結編となる本作では流石に都合の良すぎるSF設定と盛り上がりに欠ける終わり方で、風呂敷をたたむのに失敗してしまった感があります。
「アニゴジ」最終章
「ゴジラ」初のアニメーション化となった本シリーズ。
第1章では2万年の進化の末に超巨大化したゴジラが登場、第2章ではメカゴジラ自体が迎撃都市にメタモルフォーゼするという意外性のある展開を経て、最終章である本作では満を持してギドラが出現。
大風呂敷を広げようとしたのはいいものの、広げ方も畳み方も難しかったようです。
※以下多少ネタバレ含みます。
なんでもアリなSF設定
トレーラーでも分かる通り第3章はギドラが登場するわけですが、着ぐるみから解放されたCGアニメーションならではの出現シーンはそれなりにカッコよかったです。
そこでゴジラ対ギドラのスペクタクルな対決シーンが期待されるところだったわけですが、蓋を開けてみると結局ギドラがゴジラに噛み付いているだけという残念なものでした。
異世界モノの主人公かと言いたくなるギドラの俺最強設定については色々と小難しげな理屈を並べ立ててはいますが、流石にそれは都合良すぎじゃね?としか思えません。それで話が面白くなるならまだしも、説得力無さすぎて白けてしまう上に見た目的にも迫力のないシーンになってしまっており、一挙両損です。
シリーズが不評で最終章のCG予算削られちゃったのかなぁというあらぬ疑いが頭をよぎってしまいますね。流石に脚本は最初に決まってたと思いますが…実際のところ本作で最大の映像的な見所は、タイトルバックで流れたギドラがモチーフの3Dフラクタル図形でした。
科学考証についても、娯楽作品なのであまりとやかく言う気もないんですが、人の目に見えといて電磁波で観測できないとか、流石にもうちょっと考えてよと思ってしまいますね。
終わり方について
そんなわけでゴジラ対ギドラの戦闘シーンは肩透かしに終わってしまったのですが、物語自体の終わり方も良いとは言い難いものがあります。
一応詳細は伏せますが、理屈としては理解できるし、見せ方が上手ければ物語の余韻や見る人に人間性について考えさせる幕引きになる可能性もあったと思います。
ただ、主人公であるハルオの葛藤や意思決定に至る描写がほとんどなく、「え、それで終わり?」感は否めません。シリーズ全体で言えることですが、ハルオの行動原理がブレブレで、キャラクターが生きていると言うより脚本の都合で動かされているようにしか見えず、その行動に説得力が無いし感情移入できないんですよね。
最終章としては映像的にも見せ場は少なく、人間ドラマとしても盛り上がらずに終わってしまった印象です。
シリーズ全体を通して
「ゴジラ」として初のアニメーションで、映像の自由度を生かした新しいアイディアや設定が盛り込まれた点は評価できるかと思います。
ポリゴン・ピクチュアズによるフルCGの映像もなかなかのもので、人物の芝居が大仰なところはあるものの、バカでかいゴジラの描写など迫力のあるシーンも多いです。まあ3部作だとそのうち慣れちゃうんですが…
一方でキャラクター描写の浅さや御都合主義が目立ち、物語としては楽しめない点が多かったです。脚本が虚淵玄という点も注目を集めましたが、「ゴジラ」に縛られすぎたのか終わってみればそんなにエッジの効いた展開もなく、かといって怪獣映画的なエンタメとしてはシリアスに走り過ぎで、中途半端な印象は否めないところ。
後知恵ですが、最初から3部作という大ボリュームにせずに反応を見ながら続編という形の方が良かったんでは、と思ってしまいますね。
第1章『GODZILLA 怪獣惑星』 (Netflix)
第2章『GODZILLA 決戦機動増殖都市』 (Netflix)
第3章『GODZILLA 星を喰う者』 (Netflix)