映画『GODZILLA 怪獣惑星』レビュー – 「アニゴジ」第1章は2万年の地球の進化を描くSFゴジラ

映画『GODZILLA 怪獣惑星』レビュー – 「アニゴジ」第1章は2万年の地球の進化を描くSFゴジラ

★★★★★★☆☆☆☆    6/10

「アニゴジ」第1章

『GODZILLA 怪獣惑星』見てきました。オフィシャルサイトでわかる程度のネタバレに抑えつつ感想を。

劇場公開から2ヶ月後にはNetflixでの配信も開始され、そちらでも視聴可能です。

最初に作品の説明をしておくと、今度の「GODZILLA」は3部構成で、「怪獣惑星」はその第1章ということです。第2章は2018年5月公開予定。「ゴジラ」初のアニメーション作品、しかもフルCGということも有り色々異色な作品に仕上がっています。

監督は静野孔文と瀬下寛之の二人体制。瀬下監督とポリゴンピクチャーズによるフルCGアニメは『BALME!』、『シドニアの騎士』などでお馴染み。何と言っても脚本が虚淵玄(『魔法少女まどか☆マギカ』など)というのが注目です。

世界設定について

これまでのゴジラは、海から巨大生物がなぜか日本に上陸し、人類はその対応に追われるというものでした。今回のゴジラも物語の発端は同じですが、その後人類は地球を捨て、宇宙船で生存可能性のある星を目指すものの頓挫、一縷の望みを賭けて再び地球に戻って来るというところからストーリーが始まります。

恒星間航行をするSF的なアレで宇宙船での時間は20年ですが、地球上では2万年が経っていた、という設定になっています。2万年後の地球の生態系の描写も結構面白いですね。

この辺りは特撮という縛りから解放され、フルCGアニメで描くという利点を活かした世界設定になっていると思います。

ゴジラ出現以降、宇宙船で脱出するまでには宇宙人が登場したり、宇宙船にも当然のように宇宙人が乗っていて、かなりトンデモなシチュエーションになっていますが、ここが一番意外性があってもしかすると今作で一番面白いところだったかも知れません。作中ではダイジェストになっていますが、こっちを広げた方が受けたんじゃないかという気さえします。

また、これまでゴジラは人類に対する侵入者という立場でしたが、かつて地球に住んでいたとは言え2万年後に戻ってきて駆逐しようとする人類は、ゴジラから見れば侵入者であり、立場を逆転させた設定になっているのも面白いですね。これは今後生かされるのかも知れません。

ストーリー

全般的にストーリー展開は強引さを感じますね。こういう方向に持っていきたいというのは理解出来ますが、キャラクターや組織の意思決定や行動が唐突で御都合主義的な場面が結構ありました。

地球に戻る決断をするのもかなり重大な決定だと思うのですが、いつの間にかアッサリ決まっていたり、地球に上陸する際も、もうちょっと調査しとけよ…とつっこまざるを得ません。風呂敷を広げ過ぎて尺が足りなかったんでしょうか。

対ゴジラ戦の落ちも、悪くはないですがやや単純に感じます。もう少し衝撃が欲しかったかな。

あと、虚淵脚本として期待するようなエゲツなさやあざとさが薄いのもちょっと残念です。3部作なので今後出てくるのかも知れませんが。

キャラクター

主人公はやたらゴジラに復讐心を燃やしている激情型のタイプで、冒頭のシーンからして頭悪そうなのですが、その割にゴジラの弱点の解析、攻撃作戦の立案、作戦行動の指揮までやってしまいます。能力を全振りし過ぎていて、流石にそれは無理があるんじゃないかと。上から利用されていると見ることもできますが、それにしても出来過ぎだと感じます。

キャラとしてはやはり宇宙人の存在が立っていますね。この設定はもう活かさざるを得ないわけで、何かやらかしそうな雰囲気をプンプン漂わせています。むしろこちらが物語を回してくれそうで、期待できます。

紅一点のヒロインは後半に突然ちょろっと登場するのですが、主人公との関係性もよく分からず。次回以降活躍するのだと思いますが、3部作とはいえもう少し描写が無いと生きてこないような。

映像

フルCGアニメですが、制作は瀬下監督とポリゴンピクチャーズということで、安心して見ていられる出来ですね。殊更フルCGということに言及する必要がない時代になったなあと感じます。

ゴジラのマッチョな造形は結構いいですね。そんな体で動けるのかというツッコミはあるんですが、ゴジラに対しては愚問でしょう。正面から見るとなんだかクマっぽい可愛さもあります。

まとめ

『シン・ゴジラ』の後で妙にハードルが上がっちゃった感はありますが、フルCGアニメの利点を生かした新しい世界設定は評価できると思います。

ただストーリーの展開やキャラ描写の薄さに難があり、こういう作品であまり細かいことを言っても、というのはありますが、それを打ち消してくれるほどの強烈な見せ場もなく、アラが目立ってしまう印象です。

とは言え酷評するほどでもないので、世界観の面白さは活かされているだけに惜しい感じはしますね。3部作の第1作ということで、今後の盛り上がりがあるのかも知れませんが、導入としてはちょっと不安を感じてしまいます。

最後に、エンドロールの後に1シーンあって次回への引きになっているので、ご覧になる方はご注意を。

Netflix で見る