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映画『空の青さを知る人よ』レヴュー

映画『空の青さを知る人よ』レヴュー

©2019 SORAAO PROJECT

★★★★★★★☆☆☆ 7/10

若い頃の自分が今の自分を見たらという定番の話ながら、大人の汚さも若者の汚さも描いた上で人生の価値を問うストーリーは、アニメでは珍しく大人向けな味わいを感じます。

設定が無理やりすぎるのが惜しまれるところ。

青春ではない青さ

ある程度年を重ねておっさんやおばさんになると、誰しもふと昔の自分が今の自分を見たら、という思いが頭をよぎってしまうものです。それをアニメ的なファンタジーで実際にやってしまおうという設定。

ミュージシャンを目指して上京するものの演歌歌手のバックバンドとして帰郷することになる31歳の新之助と、なぜか上京前の13年前の姿のままの新之助が現れ、その二人と接触することになる17歳のあおいを軸にストーリーが展開します。

あおいは素直で前向きな若き日の新之助と、半ば夢破れ鬱屈した現在の新之助を目の当たりにし、「大人は汚い」とお決まりの文句を吐くわけですが、一方であおいの未熟さゆえの身勝手さや、周りの見えていない自己中心的な行動など、「若者の汚さ」もしっかりと対比して描かれます。それは見方によっては若さの特権でもあり、また年の功でもあります。

とかくアニメでは若者が主人公の青春キラキラ感を描いた作品が多い中、本作は30を過ぎてからの身の振り方がメインテーマでもあり、東京に出なかったあおいの姉の生き方を消極的選択ではなく肯定的価値と捉えるなど、相対化された価値観の描写はストーリーに深みを与える事に成功していると思います。これは少年が東京へ家出して世界を変えてしまう様な作品では得られないものですね。

この作品の「空の青さ」は青春の青ではなく、どんな選択をしたとしてもそこに見出すべき自らの人生の価値といういわば「幸せの青い鳥」の青であり、それを知る人への讃歌となっています。定番展開で地味さは否めないものの、普遍的な味わいのある映画に仕上がっていると思います。

設定は難あり

しかし肝心の舞台装置である13年前の自分がそのまま存在しているという設定が不自然すぎるのは残念ですね。霊や幻覚的な存在ではなく肉体を持っていたり、劇中でも荒唐無稽と自虐していますがちょっと興醒めしてしまうのは事実です。

特にクライマックスあたりの展開は無理やり青春感を出そうとしている節もあり、この映画はそもそも青春讃歌ではないのでテーマ的にも自己矛盾を感じてしまいます。

映画的見せ場ということなんでしょうが、もっと設定を練って地に足のついた展開にした方がこの作品独自の持ち味が出ていたのではと感じます。

技術点は高し

長井龍雪監督に岡田麿里脚本、田中将賀のキャラデザであり、「あの花」「ここさけ」に続く超平和バスターズ系の作品という事でアニメーションのクオリティ的には期待通り。

アニメでは鬼門とも言える楽器の演奏シーンもかなりのもので、完成したご当地ソングのシーンも見たかった。そしてやっぱり女の子が可愛いですね。ストーリー的には若さ至上主義を否定しているわけですが、作画的にはあおいに一番執心を感じるのはご愛嬌。太眉がいいです。

あおいは中の人が新人さんみたいですが相当に上手くてビビりました。作品の生命力の半分は彼女のおかげだと思います。今後の活躍にも期待。

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