無人島でのサバイバルというありがちな設定の上、原作を上手くアニメに落とし込めていないのか行き当たりばったりで安易なストーリーに感じます。脚本も作画も質が低く、この作品が生き残れることはなさそうです。
作品について
原作は田村由美による漫画で、全35巻。巨大隕石が地球に衝突した後の世界で、冷凍休眠されていた人類の生き残りを描きます。
漫画やアニメだけでなく映画やゲームなどでもよく見る設定ですが、登場人物も多く、ポスト・アポカリプスものでありサバイバルもバトルロイヤルもありというてんこ盛りなストーリー。
私は原作は未見で、以下はアニメでの感想になります。
ひと目で、尋常でない作画だと見抜いたよ
キービジュアルから一抹の不安はありましたが、見始めてすぐに感じるのはその作画の違和感です。
一話から口パクが全然合ってなかったり、中割りが飛んだようなカットなど、何だ今のと二度見してしまう(悪い意味で)シーンが散見され、なかなかお目にかかれない出来映えです。後半こうなるならまだ分かりますが全編を通してこの調子で、普通は見せ場にはリソースを割くとかあるんですがそういう箇所も見当たらず。
もともと4月に配信開始の予定が2ヶ月遅れとなったわけですが、進行が破綻しているとそれぐらいではどうにもならないというアニメ業界の内情を垣間見てしまった気分です。
それでもストーリーが良ければまだ見られるんですが、脚本の方も負けず劣らずの代物です。
それはひょっとしてギャグで言っているのか
序盤は展開がやたら早く、平野部が海に沈んでいる上に徒歩での移動にも関わらず、長崎→大分→熊本→大分→神戸の行程を半話で済ませ、かと思えば夏Aチームの過去にやたら尺を割いていたり、シリーズ構成には疑問が残ります。どうせ途中で終わるんならもっとじっくりやっても良かったのでは。
「あそこから落ちたら助からない(キリッ」という崖から落ちても怪我一つなくピンピンしているぐらいは当たり前で、なぜか突然雪の中で踊り出してそのまま死ぬという意味不明な展開もあり、ネタアニメとしてもかなりの上級者向け。
原作を大分端折ったせいなのかもしれませんが、全体的に都合のいい偶然に頼った展開と昭和の昼ドラのような人間模様に終始しており、こういうバトルロイヤルものにありがちな扇情的な展開だけで客の気を引こうとする安易な手法に陥っているように感じます。
無人島でのサバイバルを冒険譚としてではなく、人間の本質を暴く舞台装置として用いたのはウィリアム・ゴールディングの『蝿の王』(1954)が嚆矢だと思いますが、 ナチスドイツの記憶も新しい頃に書かれたこの小説は、特殊な条件下で徐々にタガが外れていった人間の集団が何をなし得るかを真に迫る筆致で描いた古典的な名作です。
その後同じようなシチュエーションの作品は多く作られたものの、今でもこれに匹敵する作品を挙げるのは難しいんですが、このアニメも設定は盛り盛りですがそれによって新しい面白さが生まれているわけでもなく、また失敗作の山が高くなってしまったようです。
生存戦略、しましょうか
Netflixの日本製オリジナルアニメも徐々に数が増えてきましたが、正直なところ深夜アニメの平均と比べても低レベルな作品が続いている気がします。
Netflixは金払いがいいらしいですが、それをいい事に下請けに丸投げして利益だけ確保しようとしたんじゃないかと勘ぐりたくなるような作品もあり、もうちょっと品質を担保するとか、やる気と才能のある若手に機会を与えるとか出来ないんでしょうかね。このままだと日本のオリジナルアニメ部門ごと切り捨てられるんじゃないかと他人事ながら心配です。
まあそれはそれで良作の買い付けが増えればその方がいいような気もしてきた今日この頃です。
7SEEDS (Netflix)