★★★★★☆☆☆☆☆ 5/10
2018年最後のNetflixオリジナルアニメとなった『HERO MASK』。謎の「マスク」をすることにより人間離れした能力を獲得した犯罪者の謎を追うクライムサスペンスものです。
ストーリー的にはありがちというかコレと言った驚きもないままに展開し、アニメーション的には崩れもしない代わりに取り立てて見所も見当たらない、いろんな要素が「凡庸」な印象です。
シリアスなクライムサスペンスだが
謎のマスクの使用によって超人的な力を得るという設定こそアニメっぽいですが、内容はいたってシリアスで萌えキャラなども登場せず、本格的なサスペンスをアニメでやりたかったんだろうなと、その意図は伝わって来ます。
ただ、本格的なものを目指せば目指すほど脚本が重要になってくるわけで、そこに本来必要なほど力を入れているようには感じられません。プロットはどこかで見たようなありがちなものだし、情報の出し過ぎで容易に展開が分かってしまうため、サスペンスに必須の先の読めないハラハラ感などはほぼ有りません。
肝心のマスクにしても、犯罪者がマスクをして超人的な能力を発揮するシーンは序盤だけで、後半は主人公を始めとして普通なはずの人間方がよほど人間離れした動きをしており、設定が生かせていないというか自ら殺しに行っている感があります。
アニメとしての魅力もイマイチ
クライムサスペンスは実写でも定番のジャンルで映画やドラマでも良質な作品があるので、わざわざアニメでやるからにはアニメならではの映像表現を期待してしまうわけですが、そういう魅力も感じられなかったのは残念ですね。
キーアイテムのマスクもちょっと変形して顔にひっつく程度で、そこはもっとアニメーションらしい外連味のある表現にできたんじゃないかとか、ラボのデザインなどどこかで見たようなシーンが多かったり、シリアス路線の割に登場人物の服装が中二感丸出しでそこはアニメっぽくなくていいんじゃないかとか、映像的な世界観の構築もちぐはぐな印象があります。
アクションシーンなどは頑張ってます感を感じるところもありますが、作画は全体的な平均点をあげる方向に力を割いている印象で突出したものはなく、見せ場と言えるほどのシーンは無かったです。
また少し気になるのは人物の芝居の演出で、妙に長いタメをとるシーンが多く、それが意味深であったり緊迫感を高める効果があれば良いのですが、うまく機能しておらず間延びしているようにしか感じません。全15話で冗長な印象もあるので、そんなことするぐらいならもう2、3話削ってテンポよくできたんじゃないのかと感じます。
結局、シリアスで本格的なサスペンスを目指したものの、ストーリー的な盛り上がりがない上にアニメーションとしての見せ所もないという二重に残念な結果に終わってしまったように思います。続編ですか?あ、大丈夫です〜。
Quo vadis, ネトフリアニメ
2018年も終わりなので最後に少し。
偶然かもしれませんが『HERO MASK』はクライムサスペンスとして同じくNetflixのオリジナルアニメである『B: The Beginning』とジャンルがモロ被りです。ネット配信のオリジナル作品として制作の自由度は高いはずですが、似たようなものが出てきたり新規性のない内容だったりして業界としての硬直性のようなものを感じてしまいます。
今年は『DEVILMAN crybaby』で日本発のNetflixオリジナルアニメが幕を開け、これが素晴らしい出来だったのでつい期待してしまったのですが、その後は絵に描いたような尻下がりな調子。
表現としての閉塞感とともに、日本のアニメは制作環境や収益化の構造など色々と取り沙汰される事も多いですが、TV放送からネット配信というメディアの変化とNetflixのような資金力のあるサービスの台頭で、何か良い変化があるんじゃないかという漠然とした期待があったのですが、結局作る側が同じでは何も変わらないという当たり前の事実を再確認するだけなんでしょうか。
1年目だし、まだ慌てるような時間じゃない…よね…