『A.I.C.O. Incarnation』レヴュー – ボンズ × Netflix 第1弾

『A.I.C.O. Incarnation』レヴュー – ボンズ × Netflix 第1弾

Production I.Gの『B: The Beginning』に続いてボンズのNetflixのオリジナルアニメ『A.I.C.O. Incarnation』が公開されました。

全12話配信中。

以下ストーリーの核心は避けますが、多少のネタバレが有ります。

ボンズのNetflixオリジナル第一弾

先日NetflixとProduction I.G、ボンズとの業務提携が発表され、Production I.Gの『B: The Beginning』はすでに公開中、『A.I.C.O. Incarnation』はボンズのNetflixオリジナル作品第一弾となります。新作ラッシュですね。

村田和也監督に鳴子ハナハルのキャラクター原案だと『翠星のガルガンティア』を思い出しますが、作品のテイストもやや似ており、人間とは何かという共通のテーマを感じます。

解題(ややネタバレあり)

最初にタイトルと世界設定について言及しておきたいと思います。

”A.I.C.O.”は劇中で説明があるので置いておくとして、”incarnation”は「受肉、化身」などと訳されますが、特に”the Incarnation”と定冠詞がついた場合はキリスト教において神の子であるキリストが人間の肉体を得て地上に生まれたことを指します。

作品の基本的な設定としては「攻殻機動隊」のように人工生体に人間の脳を移植できるようになった世界で、事故で重傷を負った主人公は脳を人工生体に移植する手術を受けます。

ところがその手術が失敗したため肉体が暴走して肥大化、それを終息させるために脳を元の肉体に戻すというのが物語の大まかな流れです。

この作品の肝としては人工生体としての脳も実現化に成功し、主人公の脳とリンクさせることで全く同じ人間のように見える存在が二人生じてしまい、一方は人間で一方は人工物であるという状況が生まれたことです。

モノに人の心は宿るのかというSFの古典的なテーマと、カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」的なヒトクローン問題の要素をミックスしたのが特徴。

人の心が人工物に「受肉」してしまった存在は、人なのか人でないのか。その受難を描いた物語と言えると思います。

ストーリーについて

設定もなかなかややこしいですが、序盤は1話から展開が早く飛ばしすぎに感じます。

最初の数話はロボットアニメで言えば主人公がロボットに乗って戦う意義付けを行う大事な所ですが、展開が早すぎて主人公の意思決定も説得力に欠け、もう少し時間をかけたほうが良かったように思います。

中盤の肥大化した肉体を制圧しつつ事件の中心地に向かうあたりは、新手のゾンビゲームのクエストをこなしているような感じで、アクションとしての面白さを生んでいます。

マターと呼ばれる肉塊の種類ごとに武器の効果が異なるシステムや、峡谷を遡上しつつポイントを制圧していく過程は実際ゲーム化しても面白そう。

終盤になるにつれて物語の核心が明かされますが、やりたい事はわかるがその設定は無理があるでしょうという所があり、素直に楽しめなかったのは残念。

クライマックスあたりでは、ヤンデレの女の子の登場やお約束のマッドサイエンティストのご活躍、また絵的な面白さもあって、ストーリーというよりはそれ以外のツッコミどころが多く、そちらで楽しむことはできました。触手っていいよね。

細かい話

こういう作品でいつも思うんですが、巨大化した肉塊のエネルギー源や食料ってどうなっているんですかね。未来技術とは言え無限に増殖されてもなあ。『AKIRA』は未知のエネルギー源ってことでかろうじて納得はできるんですが。無粋かもしれませんが、私、気になります。

あと制服でたまにパンチラしたりしなかったりする微妙なさじ加減が個人的にたいへん好ましかった次第です。どうでもいいですね。

総評:★★★★★★☆☆☆☆ 6/10

テーマ的には面白いものの、細部の設定や展開にやや無理があり面白さを活かしきれていない印象です。

特に序盤は詰め込みすぎた感があり、もう1、2話あればなあと思いました。

ただ作画は『B: The Beginning』同様安定しており、テレビ放送よりはNetflixの方がスケジュール的に有利なんでしょうかね。

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