アニメ制作にも大きな影響のあった2020年。スタッフの努力と工夫により制作はだいぶ再開されてきたようで、ありがたい限りです。終わってみれば今年も多くのアニメを楽しむことができ、中でも特にお気に入りな作品を挙げてみました。
1 | ミュークルドリーミー
今年いちばんクレイジー
ニチアサのサンリオ枠で「マイメロ」以来の衝撃をもたらした今年一番の問題作。5分アニメのテンポが20分続くという狂気の展開の速さで、変身バンクがスロー再生に見えてくる程。その変身バンクもついに早送りされるという前代未聞の事態に。スポンサー的に大丈夫なのか。
監督は『まちカドまぞく』などの桜井弘明で、随所にシュールな小ネタや演出をぶち込んできて、寛大なスポンサーと優秀なスタッフに恵まれ水を得た魚の如くその能力を発揮してしまったようです。
続編の制作も発表されたと思ったら、プリパラも森脇真琴監督で帰ってくるし、アイカツ!は実写になっちゃうし、令和やべえよ…
2 | 映像研には手を出すな!
今年いちばんファンタジー
どこか近未来的な高校で、「映像研」の面々が様々な困難に直面しつつもアニメ制作に没頭していく様を描いた作品。いわゆる部活モノと一線を画しているのは、この作品の主役は女子高生ではなく、アニメ制作そのものという点でしょう。
彼女たちの活動を通して、イマジネーションを現実の形にしていくというアニメーションがもつ根源的な魅力を表現することに成功しており、『SHIROBAKO』よりも純粋な「アニメのアニメ」になったと言えるかもしれません。
この作品にとって最も幸運だったのは、優れた映像感覚で知られる湯浅政明が監督を務めたことでしょう。日本沈没なんてなかった、いいね?
3 | 推しが武道館いってくれたら死ぬ
今年いちばんてぇてぇ
地方のローカルアイドルの、一番地味なメンバーに一目惚れしてしまったえりぴよ。推しに全てを捧げるため、収入は物販に注ぎ込み服は常にジャージという一途さゆえに笑いが生じるわけですが、アイドルとそのファンという形でも、人を好きになる気持ちの純粋さが表現されているのが素晴らしくも尊いです。ある意味これは現代におけるプラトン的愛の最も完全な姿なのかも知れない(せやろか)。
かなり原作を尊重したキャラデザですが、これで破綻しないというアニメのクオリティもすごいです。『ヤマノススメ』の山本裕介監督とエイトビット制作で、さすがの一言。
4 | デカダンス
今年いちばんディストピア
世界設定とストーリー構成が凝っており、普通のロボットアニメかと思って見ていたら、実はゲームの中のプレイヤーとNPCが逆転したような世界で、人間がピクミンのように扱われているという事実が突然明らかに。そんな絶望的な世界でも、理不尽な運命を克服すべく成長していく主人公の姿はやっぱり王道ロボットアニメそのものです。
一方この世界でのプレイヤーであるサイボーグたちは見た目も言動もコミカルで、割と悲惨な状況でも陰鬱な人間たちに比べてワイワイ楽しくやっているというコントラストも面白いです。色んな意味で予想を裏切って楽しませてくれる良質エンタメ作品に仕上がっていると思います。
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5 | 波よ聞いてくれ
今年いちばん北海道
北海道のカレー屋の店員がどういうわけかラジオのパーソナリティになるという、ローカルな上にニッチな作品。ちょろいヒロインにクズな元カレを始めとしてとして問題のある人物ばかりが登場し、その人間関係があらぬ方向にこじれてさらにおかしなことになっていきます。
原作は『無限の住人』の沙村広明で、どこに需要があるのか分からない設定から、発想と構成と妙にリアルなディテールで人を楽しませるストーリーを展開していくという手腕がお見事です。
6 | ドロヘドロ
今年いちばん意味不明
頭がトカゲの男にでかいゴキブリ、大量発生するキノコなど、まさにカオスとしか言いようがないですね。ストーリーを追うというより、林田球の独特な世界観にどっぷり浸かって楽しむためのアニメ。餃子がうまそう。
メインキャラは基本的にCGみたいですが、絵柄も独特で凡そアニメ化には向いてなさそうなのに自然に溶け込んでおり、技術点も高いですね。さすがMAPPA。
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7 | 魔王城でおやすみ
今年いちばん( ˘ω˘)スヤァ
魔王に人間界の姫が捕らえられるところから物語が始まるいかにもRPG的な世界。しかしそのクエストの内容は「姫が安眠すること」という、既存の設定を逆手に取って破壊していくギャップが面白いです。唯一RPG的設定を遂行している勇者のアなんとか君は一向に魔王城にたどり着きそうになく、テンプレ通りのそこらのアニメの擬人化のようにも見えてきます。
制作は俺たちの動画工房、監督は『ダンベル何キロ持てる?』の山﨑みつえで、こういうコメディを作らせたら安定感しかない。
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8 | 体操ザムライ
今年いちばん平成
舞台は2000年代初頭の日本で、落ち目の体操選手が再起を目指していくストーリー。懐かしの平成ネタを盛り込みながら、かつてのホームドラマ風の笑いあり涙ありな構成で、令和になった今、一旦過去を振り返るような作りになっています。
今どき異世界に転生するわけでもない30手前のおっさんが主人公なのは異色とも言えますが、異世界ではなく現実で自己実現していく物語を作りたいという原点回帰を目指した結果がこの形式をとらせたように私には見えます。
それにしても出来すぎた娘のレイチェルがやたら可愛い。Girl of the year を選ぶなら彼女でしょう。
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