格闘技モノとしてストーリー展開がベタすぎて独自の魅力が乏しい上、設定が却ってストーリーを邪魔していると感じる所もあります。映像的にももう少し頑張って欲しかった。
スチームパンクなボクシング
ざっとストーリーを説明すると、腕を機械で強化してボクシングをする機関拳闘が盛んな世界で、戦争で腕をなくしたレビウスが拳闘士としてのし上がって行くという格闘技もの。その機械が蒸気で動いていたり、スチームパンクっぽい世界観です。
制作は『シドニアの騎士』や『BLAME!』など早くから3DCGアニメを手掛けたポリゴンピクチュアズで、Netflixではおなじみ。中田春彌の漫画が原作です。
アラが目立つ設定
主人公のレビウスは子供の頃に戦争で右腕を失くし、またその時に母親がレビウスを庇ったことで何年も意識不明のまま。義手を使うようになったことがきっかけで拳闘士を目指します。
戦争被害者という社会的弱者がそのハンディキャップをバネにのし上がっていく、というよくあるプロットで、それだけならまあ良いんですが、この機関拳闘が盛んな世界では拳闘士は両腕を義手にするのが普通という設定になっており、これだと主人公が片手を失ったというハンディキャップが物語上意味を成さないという根本的な問題を感じます。
またレビウスは残った左腕は母親が守ってくれたからという理由で頑なに義手にしないんですが、もちろん拳闘士としては不利なわけで、それでも主人公なので当然のように勝ってしまう。
一応レビウスの才能の理由は語られるものの、ラスボスとして同じ能力を持った相手が登場し、圧倒的不利な条件のはずですがこれも「感覚を研ぎ澄ませ」とか言うお決まりのアドバイスで大した理由もなく勝ってしまう。
ベタな上にもベタな展開
主人公の生い立ちや「感覚を研ぎ澄ませ」もそうなんですが、ヒロインがなぜか居候として転がり込んでくるとか、かつての敵が味方となって協力してくれるとか、絵に描いたようなテンプレ展開で話が進んでいきます。
ベタすぎてあまりにも想像通りに進むんで、ホントにそれでいいのかと見ているこっちが不安を感じるほど。
ベタベタなだけあって大コケはしないというか、それなりに見られると言えば言えますが、もう水戸黄門でも見ているような気分になってきます。上に書いたように設定の穴も目立つので、王道で熱いという感じにも全くならない。
キャラの魅力も薄い
キャラクターもステレオタイプなものが多く、背景の掘り下げも浅いためストーリーは余計平板な印象を受けます。
主人公のはずのレビウスは、特に前半はたまに「そうだね」とか言うぐらいで(桃山みらいか)影が薄い上にいいとこのボンボン感が強すぎて、生い立ちから来る勝利に対する執念みたいなものを感じさせないのは、設定も生きていないしチート感を増しています。
やたらケツをぷりぷりさせている丹下段平ポジションのおっさんが実質主人公かつヒロインなんですが、それでもただの気のいいおっさんを出るものではなく、やはりこう言う作品は主人公や敵キャラに魅力がないと厳しい。
Netflixのオリジナルアニメは『バキ』とか『ケンガンアシュラ』とか格闘技ものが続いていますが、それらの作品がやり尽くされた格闘技モノの中でもなんとか新規性を打ち出そうという工夫が感じられるのに対し、この『レビウス』に関してはそれを見出すのは難しいです。正直どうしてこの作品のアニメ化という企画が通ったのか分からない。
アニメの脚本は明らかに良いとは言えない出来だと思いますが、漫画だと面白いんだろうか。
フル3DCGの映像は
ポリゴンピクチュアズ制作ということでフル3DCGなわけですが、義手というギミックを生かした試合でのトリッキーな動きなど、CGならではのカットも見られます。また夜の試合のライティングの具合などかなりキレイですね。
ただそれもパターンが少なく同じシーンの使い回しが多いので、これがいまいち盛り上がらない理由の一つにも感じます。フル3DCGでのTVシリーズは大変だとは思いますがもう少し頑張って欲しかった。
あとCGアニメも珍しく無くなってきて色眼鏡を外した目で見てみると、やはり人物の動きが不自然に感じることも多いです。おっさんのケツをぷりぷりさせる前に、もっと他に力を入れるところがあるんじゃないのという気はします。
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