映画『プロメア』レヴュー – 王道のその先は

映画『プロメア』レヴュー – 王道のその先は

★★★★★★★☆☆☆ 7/10

『天元突破グレンラガン』、『キルラキル』を生んだ今石洋之と中島かずきのコンビによる劇場版オリジナルアニメ。

映像的にはTRIGGERの作画が炸裂しており、消化不良になる程楽しめます。内容の方は良くも悪くもいつものノリ。王道展開でアツいと言えなくもないですが、変わり映えのしない展開で退屈とも言えます。今石監督には新境地を期待したいところ。

アクションは出し惜しみ無し

TRIGGERの劇場版となればやはりその作画に期待してしまうわけですが、この点に関しては期待を裏切らない質と物量で圧倒的です。

冒頭からこれでもかと言わんばかりのアクションの連続で、ここまで出し惜しみせず作画に全力投球な作品はなかなか見られるものではないですね。さすがに一度見ただけでは消化しきれないです。映画館はコマ送りできないというバグがあるのが残念。

またキャラクターからして過去の今石作品をあからさまに彷彿とさせる人たちが登場しますが、やっぱりドリル出てきちゃったよとか、ヒロインの搭乗機がダリフラ仕様だったりとか、このレイアウトエヴァだよねとか、水玉コラとか、特にロボットアニメファンは小ネタ満載で楽しめます。

ストーリーは食い足りない

一方で、ストーリーをとやかく言うタイプの作品では無いとは思うものの、ステレオタイプなキャラクターや「そんなんでええんか」的な展開で水を差されることも多く、少なくとも作画に見合うほどの面白さが脚本にあるとは言い難いです。

まあこれはいつもの中島脚本に対する不満点でもあるんですが、アツいといえばアツいものの、勢いでごまかしてるだけやんとも感じます。特に本作は映画で尺が短い事もあってか、「グレンラガン」や「キルラキル」に比べても食い足りない印象は否めません。

この辺は、気合と根性でなんとかするのがロボットアニメの王道、という今石監督の嗜好もあるのかも知れません。個人的に今石監督は、過去作品のスタイルを現代的に洗練させるのは得意ですが、そこに留まってしまうきらいがあるがように感じます。

王道のその先

先日パリのノートルダム大聖堂の尖塔が焼失しましたが、それを元の姿に復元するべきか、新しいものを造るべきかという議論があります。聖堂は文化財でもあるのであまり下手なことはできないでしょうが、アニメは純粋な創作物であり新しい表現を追求すべきものです。

確かに「グレンラガン」は面白かったし、エヴァ後の焼け野原のようなアニメ界に王道の面白さを復興した功績はあります。しかし、エヴァの価値は王道を極めようとするあまりそれを踏み越えてしまった点にこそあります。そこに痺れるし憧れるわけです。それを超えた世界を知った後でいくら王道と言っても、もはや色褪せて見えます。

この「プロメア」にしても、表現的に新しいと感じる部分もありますが、結局やってることは一緒だよなあという感想は避けがたく、三番煎じの印象は拭えません。さすがに出涸らしでしょう。

「その先」が見たいと思うのは監督の能力故なのですが、観客の身勝手な願望でしょうか。