作品本数4000本以上と、アニメの動画配信サービスとしては破格のコンテンツ数を誇るdアニメストア。月額400円(税抜)と言うお手頃価格も魅力です。作品数が多いだけに見たいと思うアニメは大抵配信されているのではないでしょうか。
そんな訳でここではその作品数の多さを生かした、他の動画配信サービスではあまり配信されていない隠れた名作・チャレンジングな問題作を中心に10本選んで見ました。
見たいアニメをあらかた見てしまった後の参考にどうぞ。
フライングベイビーズ (2019)
ポップな色彩とキュートな絵柄が縦横無尽に動き回り、見ているだけでとにかく楽しいです。常に宙に浮いているフィンランド人や突然始まるドラゴンボール的バトル等々、1カットごとにネタが仕込まれているのではないかという遊び心満載なのも素晴らしい。
温泉街でまったり過ごしていた女子中学生がフラダンス部を作って大会を目指すという大筋はありがちですが、ストーリーは有って無いようなもの。イマジネーションをカタチにするというアニメーションの面白さの原点を思い出させてくれます。
日常系ニンジャスレイヤーとでも呼ぶべき異端のアニメ。1話5分でサクッと見られるので未見の人は是非。
ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン (2015)
TRIGGERの最高傑作。古事記にもそう書かれている。
何故か4:3のアスペクト比で紙芝居のような動き、サツバツとした内容でいきなり度肝を抜かれる事必至。アイエエエエ!
基本的にはニンジャに家族を殺されたフジキドの復讐劇ですが、これほどストーリーがどうでもいい作品もないですね。日本を誤解しているのか理解しすぎているのかもはや不明な独特の言語センスが実際奥ゆかしい。
手抜きのような作画も、それ自体がギャグとして成立していますが、むしろ内容に最も適した表現を選択した結果と納得させるだけの見事なワザマエ!。古今のアニメ表現を熟知したTRIGGERスタッフが好き勝手しています。
萌えと記号に支配されたマッポーの世の中にあって、アニメイシヨンの自由さと楽しさを教えてくれる、一輪の蓮の華めいて清々しい作品。ゴウランガ!
惡の華 (2013)
押見修造のマンガが原作。監督は『蟲師』の長濱博史。
女の子の体操服を盗むことから発展するエロ漫画的な滑稽さと、思春期の鬱屈した内面を鋭く抉り出したシリアスさが同居する特異な作品。思春期というのは、過ぎてみれば何故あんなことに真剣に悩んだのかと笑い話にもできますが、当の本人にとってはまさに生死を分ける問題でありそれが世界の全てだったのです。この本来相反する視点が同時に存在しているのが最大の特徴と言えると思います。
これを原作のマンガ絵のままアニメ化してしまうと内面のリアルさを表現できない可能性があり、かと言って実写でやってしまうとイタ過ぎて見ていられないものになるでしょう。(と思ったら実写映画化されるみたいですが…)
したがって実写で撮影してそれを秒8コマのロトスコープに落とし込むという無謀とも思える手法が、この作品の内容を表現するのに最適な形式であるというのがおそらく監督の判断であり、それが恐ろしいほどに成功しています。
長濱監督は『蟲師』でも原作の独特の雰囲気を見事にアニメーションに落とし込んでいましたが、『惡の華』は原作の本質を原作以上に表現してしまったと言えると思います。この完成度は天才の所業と言わざるを得ない。
私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! (2013)
JKになってモテモテの学園生活が送れると勝手に思っていたら友達すらできないというボッチな女子高生が主人公のギャグアニメ。
極度に内向的な外面に対し、内面的には強気であらゆる方向に過激なツッコミ(意味深)を入れていく独白パートとのギャップが面白いです。内弁慶な姉に理不尽な扱いを受ける弟が不憫でならない。
隠キャ属性の人はライフを削られそうな内容ですが、もこっちの妙にポジティプな性格と周りの人達が基本いい人という絶妙なバランスを保っているのも人気の理由でしょう。
原作のストックも溜まってきたようですし、中の人が完全に餃子の人になる前に2期が見たいものです。
あいまいみー (2013)

狂気しかない。
これはもう言葉による説明が不可能なので見ましょう。5分だし。
ミイ役の内田真礼によるキレキレの演技が最高で、こういうイカれた役をやらせると右に出る者がいないですね。作者が何かに目覚めてしまって後に声優ネタ禁止令が通達される事態に。あと天津向の声優初挑戦は「鉄血のオルフェンズ」だから。いいね。
2期の「~妄想カタストロフ~」、3期の「~Surgical Friends~」も配信中です。次は仮想通貨で有り金全部溶かした作者の顔が見たいな〜。
新世界より (2012)

貴志祐介の同名小説をアニメ化。
何と言っても原作の世界観と構想力が凄まじく、一度見出すと途中でやめることは不可能と思われるぐらい引き込まれます。
人々が「呪力」と呼ばれる超能力を有するようになった1000年後の未来。発現する能力、消えていく子供達、同性愛、隠された歴史、人類以外の種に支配される恐怖というセンセーショナルな内容が、緻密な設定とプロットによって有無を言わさぬ説得力で展開されます。
特に後半は作画的に残念なところもあるんですが、ストーリーの魅力がそれを補って余りあるものがあります。また「種田梨沙(新人)」というアニメでは珍しいクレジットがなされ、当時の期待ほどが窺える彼女の演技力も見どころ。今やRhodanthe*でPetit Rabbit’sでフランシュシュですからね…
探偵オペラ ミルキィホームズ (2010)

森脇真琴監督とふでやすかずゆき脚本のゴールデンコンビが好き放題やってしまったアニメ。これはひどい(褒めてます)。
「トイズ」と言われる超能力を持った探偵と怪盗がしのぎを削る偵都ヨコハマ…のはずが、主人公4人は力を失ってしまい、それを取り戻そうとするどころかどんどん自堕落な生活に陥っていく有様。アンリエットさんの苦労がしのばれます。
キャラクターの見た目は可愛いものの、中身はポンコツだったりお花畑だったりクズだったり桃色だったりでまともな人間が出てきません。基本的にはギャグですが、かなり飛ばした内容でシュールというか頭おかしいよこの人たち。
ミルキィホームズは全シリーズ配信中ですが、やはり1期と2期が真骨頂ですね。
空中ブランコ (2009)

精神科を訪れる様々な症状を抱える患者たちを描いた異色のアニメ。
サイケデリックな色調、実写混じりの映像など実験的な演出が最大の特徴かつ魅力です。この手法は好き嫌いが分かれるかも知れませんが、心の病という題材を扱うにあたって非常に効果的に働いており、哀しくも可笑しな患者の精神世界を余すところなく表現することに成功しています。
中村健治監督は『モノノ怪』では独特の擬古典的装飾美に溢れる表現が魅力的でしたが、本作では打って変わってモダンでポップな形式で攻めており、アニメならではの表現の可能性を追求している感がありますね。テンプレ再生産のアニメにうんざりしたらぜひ見て欲しいです。
それにしてもこの頃のノイタミナは尖ってて良かったな…
フリクリ (2000)

新作の「フリクリ オルタナ」「フリクリ プログレ」が公開された影響か、オリジナルの「フリクリ」がプライムビデオ でも配信開始されました。新作の方は残念な結果に終わってしまいましたが、改めてオリジナルの凄さを再確認することになった格好です。
OVAとして発表された本作は、テレビでは決してできなかったであろう思春期の少年少女の不健全な衝動をポップな演出でやりたい放題に描き出した傑作です。
中でもロボット同士の戦闘シーンは、その構図から動き、エフェクトに至るまでその1コマ1コマが決まりに決まってカッコ良く、その伝説的とも言えるクオリティで海外を含めカルト的な人気を博しました。
個人的にはニナモが可愛すぎてヤバイです。お風呂上がりにパジャマ&メガネで迫るシーンを見て鶴巻監督に一生ついて行こうと思いました。
見たことがない方はこの機会に是非。
OH!スーパーミルクチャン (2000)

可愛い見た目に反してブラックなネタが酷すぎるギャグアニメ。OPからしてパロディ満載です。
ミルクチャンは大統領から極秘の指令を受けるエージェントという設定ですが、借金を踏み倒しまくっていて「人に払う金はねーんだよ!バカっつらー!」などの言動がヤバイ。中の人は当時小学生で、そのロリボイスとセリフのギャップが凄いです。JSに何言わしとんねん。
ポップでキュートなデザインワークスも魅力で、ミルクチャンを始めとしたキャラクターやテレビ電話などのプロップのデザインは今見てもカッコ良く、『時計じかけのオレンジ』みたいな古びない近未来感がありますね。
20世紀最後の年に生まれた世紀末覇者アニメ。
※配信作品は 2020年11月5日時点のものです。配信期間が終了した場合視聴できなくなるのでご注意ください。